書評
―『リハビリの結果と責任 絶望につぐ絶望,そして再生へ』―看護のありようが障害受容の当事者から問いかけられている
川島 みどり
1
1日本赤十字看護大学
pp.799
発行日 2010年9月25日
Published Date 2010/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101562
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
突然の交通事故から生還したものの,重度の障害を負ったまま3か月ごとの転院を繰り返しながらのリハビリ入院4年間。在宅生活に復帰したとはいえ,現在なお障害は続いている。その当事者が,自助具を装着した指で叩いたキーボードから打ち出した数々の真実の重み。否認,怒り,忍耐,疑念に揺れ動きながら,複数の会社経営者として活躍した著者は,企業のコンセプトから見たリハビリの世界を批判し,結果をふまえた責任の曖昧さを厳しく問うている。「人間を対象に」「生命を預かるゆえ」にと,医療者の誰もが疑いなく持ち続けた論理をひょっとしたら隠れ蓑にして来なかったか。納得しながら一気に読み進めた部分でもあった。長期にわたる療養生活で,看護のありようについての指摘にも耳傾けなければなるまい。全介助の患者の集まる食堂の一隅で,1人の看護師が複数の患者をかけ持つ介助場面,「自分の目の前にあるご飯を見ながら,その思うに任せない気持ちで食べさせてもらえる順番を待ち……無念さで涙がポロポロ……強烈な疎外感を感じ……」と聞けば,人手不足を理由に正当化し,慣習化しているこの行為を,看護師の立場から何と答えるべきだろう。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.