連載 ワットさんのペーシェントロジィ[今,患者が主役の時代]・4
絶望の大きさは意志の大きさ
ワット 隆子
1
1あけぼの会
pp.700-703
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922039
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意志の大きさは絶望の大きさに正比する
「もっとも他人がとめなければ死んでしまうような人は結局死んだ方が一番良いし,それに再び起ち上がるものを内部に蓄えているような人は,定まって失敗しますね.蓄えているものに邪魔されて死に切れないらしいのですね.僕思うんですが,意志の大いさは絶望の大いさに正比する,とね.意志のない者に絶望などあろうはずがないじゃありませんか.生きる意志こそ源泉だと常に思っているのです.しかし下駄がひっくり返ったのですか,あの時はちょっとびっくりしましたよ──」
これは北條民雄の『いのちの初夜』(角川文庫,p.26)という小説の中の一文.今から50年以上も前に‘文学界賞’を受賞した.作者は1914年生まれ.20歳(はたち)の時,癩発病,村山療養所に入る.そのために僅か1年足らずで破婚,そして1937年に23歳で死去している.薄幸の夭逝作家と言えよう.『いのちの初夜』は,実に作者22歳の時の作品である.
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