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看護学生にとって,脳卒中を中心とした脳神経内科や脳神経外科分野の疾患のメカニズムの理解は難解であり,苦手意識を持っている者が多いと感じる。それは,脳・神経系の解剖が複雑であることや,脳の機能局在のため,障害の部位や程度により出現する症状が多岐にわたること等が考えられる。一方,近年のCTやMRIをはじめとする画像診断の進歩は目覚ましく,これらの診断技術等の科学的根拠に基づいた看護実践のためには,疾患のメカニズムの理解が不可欠である。そのため,看護教員である筆者は,学生ができるだけ平易で分かりやすく,かつ正確に具体的にイメージできる教材を用いた授業展開を心がけている。幸いにも最近の書籍類は,図や表,それに写真等が,カラーでふんだんに掲載されているものが多く発行されつつある。そのため,疾患のメカニズムの理解に有用なものが容易に入手できるようになった。しかしながら,動画による教材はまだまだ希少であり,疾患のメカニズムについて,学生が,立体的にイメージできる教材があればと感じていた。本教材は,この私のニードに応えてくれるものであった。日本語版監修は,わが国を代表する脳卒中治療の権威であり,また2004年3月に心原性脳塞栓症を患った長嶋茂雄氏の主治医としても著名な,東京女子医科大学の内山真一郎教授である。
本教材は,パソコンを用いて,連続再生と項目別再生の2つの再生方法の選択が可能である。項目としては,「脳卒中」「危険因子」「脳卒中の種類」「症状」「診断」「治療」「リハビリテーション」「自己管理」があり,それぞれ30~45秒程度のアニメーションの再生が可能である。中でも,「脳卒中の種類」においては,疾患のメカニズムの理解が容易にできるであろう。また,「治療」においても,血栓溶解薬をはじめとした薬物療法や手術療法,それに血管内治療が,CG映像でリアルに再現され,非常にわかりやすい。看護学生等の初学者や,患者さん,家族への説明に有用であると思われる。一方,「危険因子」「リハビリテーション」「自己管理」は,広く浅く述べられるのみであり,メカニズムについての解説がほしい。また,せっかくのCG映像であるが,スクリーンを最大化しても大きさが限られている。さらに,全体的にナレーションが早く,学習者が自己学習で繰り返し見ることができれば問題はないであろうが,授業で使用したり,患者さん,家族への教育や説明で使用したりする際には,使用方法に工夫が必要と思われる。
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