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平成21年度カリキュラム改正によって,基礎教育における看護実践能力の育成はますます切実な課題として日々の授業構成に悩んでいる教員の方も多いと考えられる。在院日数短縮の中で,短期間に複数の疾病をもつ患者に対しさまざまな知識を統合し,エビデンスに基づいた看護を提供することが必要とされ,看護職の的確な「判断力」の育成は,専門職の責務としてますます重要な課題である。特に心筋梗塞の患者を救うためには治療を受けるまでの時間を短縮すれば,有意に死亡率を低下させることができる。そのためにはフィジカルアセスメントをする力がなければ,目の前で胸痛を訴えている患者が緊急を要するのか否かさえ判断することは困難である。アセスメント力の基盤のひとつには,身体のしくみとはたらきや病態生理学の知識の理解がある。ところが,それらは皮膚に覆い隠されていてイメージをするしかない。学生は“心臓や循環は嫌い,複雑でイメージしにくいしわからない”などと平気で言ってのける。循環の構造と機能が理解できなければ,患者が訴える呼吸困難や呼吸音の異常やその緊急性の判断や安楽にできる体位さえわからず,役に立つことはできないのに。“もし心臓が立体的に動く画像があればしつこく説明しなくてもいいのに……”,と感じていた。
本DVDはまさしく,リアルな心臓が3Dで滑らかにポンプとして動き,それも前後左右どこからでもぐるりと見ることができ,冠状動脈もプラークが破綻する様子がよくわかる。内容としても病態メカニズムと病因,リスクファクター,検査診断と治療法から予防法までがコンパクトに分かりやすく解説されている。実際の映像ではかえって理解しにくくなることがある身体の構造機能や病態メカニズムは立体的な模式化映像のほうがわかりやすいと感じるし,アニメーションもモデルが欧米人であることでリアル過ぎない映像となり,初学者や一般人にとっては臓器や血液に触れることでの負担が少ないであろう。いまや授業は平面的なものではなく,DVDの出現によってVTR映像よりも更に必要な箇所を適時必要最小限に切り取って利用しながら学生のイメージを助ける時代である。3Dゲーム世代の学生にはもはや「当然でしょ」というものなのかもしれない。
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