映評
―『乳癌 フォーカスメディカ 疾患解説アニメーション』―医療コミュニケーションにおいて共有体感を促す視聴覚教材
橋本 久美子
1
1聖路加国際病院総合医療相談室
pp.433
発行日 2009年5月25日
Published Date 2009/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101200
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●教育では「なぜ?」の喚起が重要
乳がんと病気を告げられた患者・家族たちは,先の見えない不安の中で事の重大さを必死に理解しようとしている。がんの治療も慢性疾患と同様に,自分の病気と向き合いながら自己管理し,時には自分で治療を選択し決断することも求められる。「お医者様」「患者様」から,「パートナー」という関係の変化の中で,コミュニケーションは常に誤解や錯覚,思い込みなどの危険と隣り合わせにあり,どういう知識をどういう形で伝えるかは,医療のコミュニケーションにおいても重要である。そして,そのことを十分に自覚し,乳がんの治療には,自分の病気や治療を理解し,その選択に参加しているという意識を高めていけるように,患者のケアに携わるあらゆる職種の人々も知識を持ち,よきパートナーとなり医療に参加していくことが,医療の質を向上させる原動力となる。
教育の中で,「なぜ?」ということを,まず,頭の中で作り,そして「この病気はこうなっているから,こうなるのか!だからこうなったのか!」と具体的な問題に対して多元的にしていくことは重要である。そして納得ができて「わかった!」という反応がリアルに出てくるような経験は,特に重要である。「なぜだろう?」という疑問は,知識や理論などの思考に働きかけるが,知識や情報だけでは行動は起こせない。行動を変えようとする気になるのは「なるほど!」と納得できたときである。そして人は多くの刺激があったほうが忘れにくいものでもある。
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