特集 看護教育がチーム医療にできること
看護学と医学の“異文化交流”から―チーム医療の活性化のために
早田 宏
1,2
1佐世保市立看護専門学校
2佐世保市立総合病院
pp.806-810
発行日 2008年9月25日
Published Date 2008/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101014
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はじめに
医療の世界において,医学と看護学は主要な部分を占めており,本来なら共通の基盤の上に成り立つべきものである。しかし,その現場において─いくつかの病院勤務の経験の中で─医師と看護師の連携が必ずしも上手くいかないことを目にしてきた。筆者は当初,その不協和音はチーム構成員の個人の問題であると考えていたが,最近,もっと根源的なものが背景に存在しているのではないかと考えるようになった。この7年間には,医学教育の場で教官として従事してきたのだが1),“がん告知”などのテーマで医学生と看護学生の共同講義を行ってきた中で,その同じ授業内容の受けとめ方が医学生と看護学生で異なるという印象をもった。さらに,昨年来,看護専門学校の教員として看護教育にも関わることとなり,看護学と医学とがやはり異質なものであるとの思いが強くなっている。
ただし,看護学と医学が同じことをするべきではないし,そうあってはならないだろう。また,医学と看護学の優劣は論じられるものではないことは強調しておきたい。それでも,既存の医師と看護師が異なる学問体系・価値観の中で教育を受けてきたということ,また,現在の医学教育と看護教育のいずれもが問題を抱えて教育制度の見直しをせざるを得なくなったという現状は認識しておかなければならない。
昨今,「患者中心の医療」や「全人的医療」という言葉が安易に唱えられるが,医学と看護学の違いをスタッフ間で対話を通して認め合うことが,真の「患者中心の医療」や「全人的医療」を具現化するための必要条件の1つであると思う。本稿が医学と看護学の両者への問題提起となり,その隔たりをつなげる架け橋の端緒となればと願う。
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