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はじめに
看護大学が続々と開学し看護教育の大学化が進むなかで,看護専門学校は,看護教育のアイデンティティを確立し存在意義を明確に打ち出す時期にきている。筆者が看護教員養成研修生時代に,そこで常に問われたのは,看護基礎教育は「看護師養成教育」なのか「看護学教育なのか」ということであった。当時は,「看護師教育」は職業訓練的教育であり,「看護学教育」は学問的裏づけに基づいた教育と解釈していた。そのため,その問いを受けるたびに,自分の教育活動を振り返り,職業訓練ではなく看護(学)教育を目指すことを心に念じていた。しかし,現在では「看護師教育」とは,看護専門職としての専門的能力・自律性などを備えた人材を育成する教育であり,当然看護学教育を含むものであるため,二極分化するものではないと考えるようになった。
日本看護系大学協議会は,大学教育は専門職業教育(professional education)として看護学の学問の追及かつ学問的に裏打ちされた看護実践者を育成し,専門学校・短大は,職業教育(occupational education)として看護ケアが着実に実践できる人材を育成するとし,それぞれ異なる特性をもつとした1)。しかし,カリキュラム上は,大学であろうと専門学校であろうと同じ指定基準の下に教育が行われており,4年制大学も3年過程に位置づいている。また看護師免許にも区別があるわけではない。看護専門学校が目指しているのは看護学を体系的に学ばせる専門職業教育であり,専門学校教育と大学教育の差異化を図る必要はないと考えたい。
しかし,大学設置基準や,看護師学校養成所指定規則から見ると,大学と専門学校には教育環境の違いがあるのは,歴然とした事実である。施設設備や,教員の資格要件,図書・教材関係の整備などについて,大学との差は大きい。高学歴志向により,専門学校入学生の学力も低下してきている。全国の看護専門学校のなかには,指定規則・指導要領等により一定の基準があるとはいえ,専修学校ではなく各種学校に位置づく学校もある。
そのようななかで,国家試験合格率を高く保ち,質の高い看護実践者を送り出す専門学校の努力は並々ならぬものがある。限られた条件をふまえたうえで,専門学校の看護教育の理想を追求し,学校経営の戦略の一環として成果をあげていくための方策を見出したい。
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