連載 私の一冊・35
人間の根源的で普遍的な問いへの挑戦
山本 雅基
1
1在宅ホスピスケア施設「きぼうのいえ」
pp.376-377
発行日 2008年4月25日
Published Date 2008/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100911
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- 文献概要
■臨死体験とは
本書は1991年に放映された「NHKスペシャル」の取材記録のうち,お蔵入りする運命であった膨大な資料を立花隆氏が再構成して,世に問うた大著です。臨死体験とは,病気や事故などで死にかかった人が,九死に一生を得て意識を回復したときに語る,不思議なイメージ体験です。立花氏は,経験者の証言に対する客観的評価,信憑性に多面的な吟味を加え,執念ともいえる知識への欲求にしたがって,臨死体験の本質に迫ろうとします。臨死体験に関する類書は邦訳だけでも現在,数十冊が出版されていますが,本書はこの現象を総体的に知るに適したガイドブックとよんでよいでしょう。
臨死体験が現代において脚光を浴びたのは,死生学で著名なエリザベス・キューブラ・ロス博士の研究と,バージニア大学で精神医学を学んでいたレイモンド・ムーディー博士が発表した『かいま見た死後の世界』(評論社,1975年,原題”Life after the life”)が端緒です。それまで世界中のあらゆる伝承,文学,文化現象,また言うまでもなく宗教という次元で,人間の「死」についての探求は続けられてきました。
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