特集 災害看護学構築に向けて・2
被災地における保健師活動
井伊 久美子
1
1兵庫県立大学看護学部
pp.205-208
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100232
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
私の災害看護の始まり
1995年1月17日未明,震度7の激しい揺れは多くの人々の命と生活を奪った。私にとっても阪神・淡路大震災の体験は生涯忘れられない。
その老人は,1週間近く公民館の図書室の使用禁止になったトイレのそばの,書架と書架の間の冷たい床に寝かされていた。介護者である高齢の妻ともども着の身着のままほこりまみれで,おむつの交換もままならない中で約1週間過ごしていたのである。親戚の家に引き取られることになったのであるが,荷物はほとんどなかった。数枚の紙おむつと毛布とわずかな手荷物を持ち,遠縁の男性2人におぶわれて,言葉少なに周囲の人々に挨拶をし,ワゴン車に乗って遠ざかっていった。あとには,最初に敷いたままの新聞紙がクシャクシャになって残っていた。この老人の搬送の手伝いが,震災での私の最初の仕事であった。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.