連載 保健婦日記・1【新連載】
寿町との出会い—一人ひとりに誠実に
平間 チヨミ
1,2
1横浜市港北保健所
2前,中保健所
pp.952-953
発行日 1992年10月10日
Published Date 1992/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902733
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中保健所へ異動したての頃
昭和六〇年四月、「中保健所勤務を命ずる」という辞令を受けた時、いつかは寿地区(東京の山谷、大阪の釜ケ崎と並び称される日本三大日雇い労働者の街、人口約七千人)を担当する日も来るだろうというだけで深い思いはなかった。
五月の肌寒い曇天の日、寿生活館(横浜市民生局の生活相談所)ヘオリエンテーションを受けに行った。今にも雨が降りそうなのに、ドヤ(簡易宿泊所)の窓々には布団が干されており、公園のベンチの上の古いプレーヤーのすりきれたレコードから北島三郎の『涙船』が流れていた。その周囲で五〜六人の男たちがワンカップを片手に千鳥足でわめいていた。寿生活館の門扉に放尿している男もいて、わびしい気持ちになってしまったのを覚えている。
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