連載 管理者日誌・3
看護を語り合える土壌
井上 弘子
1
1北海道総合在宅ケア事業団
pp.228-229
発行日 2002年3月15日
Published Date 2002/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901464
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精神科看護事例検討会で得たもの
長い看護人生のなかで,スタッフとともに熱く看護について語り合うことができたのは,精神神経科病棟の婦長をしていた6年間であったと思います。初めて婦長になり,半数以上の新しいスタッフとともに目指す看護を構築するため,初年度は暗中模索の日々を過ごしていました。外口玉子氏主催の精神科看護事例検討会が始まったのはその頃で,私も参加する機会を得ることができました。全国から集まった精神科看護に携わる約70人の看護者が7~8つのグループに分かれ,各々が持ち寄った事例を丹念に検討してゆくのです。1事例に2日も3日もかけて検討することがありました。
2度目の参加のとき,「35年間閉鎖病棟の生活を余儀なくされた陳旧性精神分裂病の女性,Nさんとの関わり」というテーマでまとめた私の事例が取り上げられました。グループメンバーからの矢継早の質問に答えながら,Nさんのこと,私の思いや関わり,私とチームメンバーとの関係等について語りました。Nさんとの関わりのなかで気がかりな部分を話しているとき,あるメンバーに「それは井上さんの生活感覚だ」と言われたことが転換点となり,時を経て,その部分が私のなかで解明されたのです。私もスタッフもNさんのために良かれと思い行なったことが,実はNさんにとっての看護にはなっていなかった。
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