連載 感染症 Up to Date・61
ネットワーク化する若者の性行動とHIV/STD感染リスク
木原 正博
1
,
木原 雅子
2
,
市川 誠一
3
,
山本 太郎
4
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻国際保健学
2長崎大学大学院医学研究科感染分子病態学
3神奈川県立衛生短期大学衛生技術科公衆衛生学
4京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻国際保健学
pp.490-493
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902450
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HIVは性行為で感染するが,性行為を行うだけで流行(epidemic)が生じるのではない。当然のことではあるが,HIVが性行為間で次々と受け渡されない限り,流行は生じない。つまり,流行が生じるには,その性行為がネットワーク化していることが必要である1)。そして,そのネットワークはHIVを伝播するものでなければならない。ネットワーク化していても,たとえば,すべての性行為でコンドームが完全に使われていれば,流行は生じない。コンドーム使用の程度,性行為の頻度,そして性感染症(STD)の蔓延の程度によって“HIVの伝播性”は左右され,したがって流行の程度が規定される。
図1は,最近米国で報告されたミシシッピー州某町におけるHIV感染者の性的ネットワークである2)。7名の男女の感染者は,それぞれ多数の性的パートナーを有しており,その無防備なネットワークを通じて,HIVに感染していった様子がうかがわれる。このようにHIVの流行は,HIV伝播性のあるネットワークがどれほど社会に発達しているかによって決定されるのである。本稿では,われわれが最近実施した全国性行動調査の結果を性的ネットワークの観点から論じ,そのHIV流行における意義と保健行政に課せられた課題について言及する。
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