特集 気になる「閉じこもり」とは—改めて「老い」を考える
高齢者の「閉じこもり」に関する研究の状況—海外のHouseboundの定義・出現率を中心に
鳩野 洋子
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1国立公衆衛生院公衆衛生看護学部
pp.28-33
発行日 2000年1月10日
Published Date 2000/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902125
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はじめに
「閉じこもり」の概念は日本に紹介されて久しい1,2)が,それに関する定義に定まったものはなく,これに関する研究はまだ緒についたばかりというのが日本の現状であろう。とはいえ,保健婦にとって「閉じこもり」という言葉は,特に虚弱の高齢者に対する「どこかが非常に悪いというわけではないけれど,何となく危ういと感じる」という状況の一側面を的確にとらえた言葉として支持を受けた概念ではないかと感じている。厚生省でも老人保健対策の一環として「閉じこもり」の概念に注目し,そのアセスメントを実施する方向に動きつつある3)。
ところで,用語はそのあいまいさが許容される範囲によって,いくつかの分類がなされると言われている。「寝たきり」という言葉も当初は日常語として一般的に広く状態を表すものとして使われていたが,その後,概念的に厳密な記述用語として整理されていった経緯がある4).「閉じこもり」も,今まさにその状況にあると言えよう。
その整理の中では,諸外国で閉じこもりがどのように考えられているかを知っておく必要があるだろう。英語で閉じこもりに該当する言葉は「Housebound」(もしくは「Homebound」)である。House(家庭に)bound(縛られた,閉ざされた)状態という言葉をキーワードとして医学分野の最大のデータベースであるMedlineで検索を行うと,1969年からみられはじめ,ここ10年間に急速に数が増加してゆく。
ここでは,地域高齢者の閉じこもりを中心課題として扱った海外論文の中でHouseboundの概念,出現率,閉じこもりの影響を中心に紹介してゆきたい。
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