特集 痴呆性老人対策を見直す—ぼけても安心できる地域づくりのために
今,痴呆対策に求められているもの—医師の立場から
須貝 佑一
1
1浴風会病院精神科
pp.904-907
発行日 1998年10月10日
Published Date 1998/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901868
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超高齢化社会の副作用
人口の高齢化は思ったより早い。このほど出された総務庁の国勢調査速報では総人口の15%は65歳以上だという。一般世帯の約30%にあたる1290万世帯が高齢者を抱えている。高齢化社会のもたらす問題がいくつかあるとしたらその筆頭にあげていいと思われるのが痴呆症の増加ということだろう。各地の疫学調査では痴呆症の発病率を65歳以上のおおよそ5%としている。これは,どの地域どの国で調べたものでも同じ程度だ。人の脳の老化と結びついた病気だから地域や文化や人種の差がなく一定なのだろう。発病年齢を細かくみていくと65歳までは1%にも満たない発病率が,75歳で8%,80歳で15%,85歳で30%と5年きざみで倍々と増えていく。だから高齢人口が増えるということは必然的に痴呆人口がふえるということだ。事実そうなりつつある。超高齢化社会の抱える不可避な側面だという理解が必要だ。
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