特集 母子保健の明日—変わる育児環境と母子への援助
都道府県保健所の母子保健計画の考え方と進め方
笹井 康典
1
1大阪府四条畷保健所
pp.347-351
発行日 1996年5月10日
Published Date 1996/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901353
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母子保健の目標の明確化が重要
理念や目標についての十分な議論が必要
およそこの20年間に,公衆衛生活動は量的にも質的にも大きく変化し,拡大した。その理念的背景は,プライマリーヘルスケア,ヘルスプロモーション,ノーマライゼーション,である。公衆衛生活動の今日的な方法論1)は表1に示したとおりであるが,これらを地域の母子保健活動に置き換えてみると,①親と子供の健康的なライフスタイルづくり,②適切な医療の提供,適切な栄養,快適な環境,適切な保育などの整備,③育児(療養)に関する家族,友人,当事者自身のグループなどの社会的ネットワークづくり,④喫煙防止,適正飲酒などを実現する健康的な公共政策の実施,⑤親子ともに健康に関する判断力など自己決定力を向上させる施策づくり,として目標化できる。
今後の母子保健活動を進める際に最も重要なことは,公衆衛生活動の理念や方法論を踏まえ,各地域で母子保健活動に従事している人たちが,新しい母子保健の理念,目標,目標を達成するための具体的な事業,その評価の方法を丹念に議論し,計画をたてることである。健診を行うことが目標ではない。何のために健診を行っているのかを十分に議論しておく必要がある。しかし,すべてにわたり完壁な計画を作らなければならないと悩む必要はない。作りやすいところから作るということでいいのではないか。
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