連載 野道を行けば・2
犬のダイスケ
頼富 淳子
1
1(財)杉並区さんあい公社
pp.158-161
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901324
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犬もいろいろ
他所のお宅を訪問する仕事柄,私はその家で飼われている犬や猫などの動物とも知り合いになる。なかには私を自分の客と完全に勘違いしていた犬もいて,辟易したことがある。もっともその犬は自分のことを犬だと思っていないフシもあったから,私を犬だと見誤っていたとは限らない。彼はなぜか私のことを大変気にいってくれていて,行くと必ず台所にひっこむと大きな骨をくわえて戻って来て私に見せた。「わあ,すごいわねえ,いいなあ」とお世辞を言うと得意になって肉のこびりついた骨を賞味してみるように勧めるのには閉口した。
私がご主人に容態を聞いているとその犬はにじり寄って来て私に“お手”を差し出す。しかたがないから一応握手に応じてからご主人と話をしようとすると,今度は別の手を出す。こちらも握手して,気が済むかと思うと,また,さっきの手を出すという具合で,いつの間にやら犬の相手をすることになる。
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