連載 衛生制度の開拓者たち—明治はじめ京都における政策をめぐって・7
「癲狂院」の医学的背景
小野 尚香
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.326-329
発行日 1994年4月10日
Published Date 1994/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900914
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精神障害者のための施設,京都府立「癲狂院」は,明治8(1875)年7月25日に開業しました。その施設のあり方,患者の処遇や治療法が模索され,療病院(京都府の衛生政策の中枢機関)に招かれていたドイツ人医師ヨンケル(Langegg Junker)の知識と視点が,その軸となりました。
それは,18世紀後半からフランス,イギリスなどで注目されたモラル・トリートメント(moral treatment:道徳療法,精神療法とも訳す)を背景とするものでした。さらに,イギリスの精神科医モーズレー(Henry Maudsley)が記した『精神病約説』(「Insanity」)の影響も受けています。
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