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はじめに
喫煙がCOPD発症の最大の危険因子であることに異論はないが,必ずしもすべての喫煙者に同じような一秒量の低下が生じるわけではない1).発症のリスクに関連した遺伝因子を明らかにするために,過去40年近くにわたって肺気腫や慢性気管支炎,COPDを対象とした遺伝子解析が行われてきた.しかしながら,α1-アンチトリプシンをコードするSERPINA1遺伝子以外には,再現性を持って同定される遺伝因子はほとんどなかった.その背景にはCOPDが極めて多様な分子病態を内包する症候群であることが一つの要因として挙げられる.COPDは一秒量,一秒率によって定義されるが,肺気腫の程度,急性増悪の頻度やQOLは同じ程度の呼吸機能を有する患者でも大きく異なり,臨床像は極めて多彩である.今後は,このような表現型の多様性を考慮した遺伝的検討が重要となる.
一方,遺伝子解析にあたってどのような候補遺伝子を選択するかは,その時点でのわれわれのCOPDの病態に対する限られた理解に依存するために,結果の再現に耐えられるだけの一定の影響を持った遺伝因子が発見されなかった可能性もある.近年,COPDの領域においても既知の病態理解に依存しないアプローチであるゲノム網羅的な解析が盛んに行われるようになり,集団を超えて再現性がみられる遺伝因子が同定されるようになってきた.α1-アンチトリプシンの遺伝的な欠損が肺気腫の発症に極めて重要な要因であることは,その後のプロテアーゼ/アンチプロテアーゼ仮説の発展に繋がっていったように,COPDの発症や病態,表現型の違いに影響を与える遺伝子を同定することで,COPDの遺伝的な基盤とその多様性を明確にし,分子病態に基づいた疾患の分類や治療戦略の構築が期待される.
本稿では最近のCOPDに関するGenome-wide association analysis(GWAS)の結果から見えてくるCOPDの病態を概説する.
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