特集 肥満をさぐる
肥満の社会的背景
田多井 吉之助
1
1日本バイオリズムセンター
pp.24-27
発行日 1967年5月10日
Published Date 1967/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203924
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I.肥満の世界史と日本
人類の生活歴をみると,古代にはもっぱら農耕と牧畜にその生存努力の大半をさいて生活していたことがわかる。したがって,当時描かれた絵画あるいは彫刻で知るかぎり,洋の東西を問わず,肥満者がいたとは思われない。栄養学的にみてかなりのカロリーを摂取するにせよ,それに見合う身体労働の激しさがカロリー・バランスを保って,肥満の生ずる余地を残さなかったものと想像される。
むろん,現在でも,世界の多くの後進地域ではたえず飢餓に脅かされており,私たちがテレビや報道写真で毎日みるとおり,骨格があられになった人びとがたむろしている。そして,そこから生ずる生活の不安が情緒的行動に影響を与え,社会構造やその活動に特長をあたえる結果にもなっている。
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