特集 保健婦がしばしば使う用語を考える—住民参加・住民主体
住民参加・住民主体の意味
辻山 幸宣
1
1中央大学法学部
pp.1075-1080
発行日 1993年12月10日
Published Date 1993/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900837
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はじめに
この小論では,政治学あるいは行政学の分野で「住民参加(市民参加)」「住民主体(市民主体)」という用語がどのように使われているかをわかりやすく解説することが期待されている。しかしことはそう簡単ではない。政治学において「参加」の問題は,権力の正統性をめぐる重要な論点として今もなお課題の1つである。1973年に『現代都市政策講座』全11巻が編まれたが,そのうちの1巻が『市民参加』にあてられたほどである。ここでは「参加」は政府と市民の関係,とりわけ政府の決定に対する市民の関与のことであり,メーデーに「全国で○○万人“参加”した」という「参加」とはその観点を異にしている。
一方,「住民主体」という用語はこの分野ではあまり使われないように思える。ものを知らないとのお叱りを頂戴するかもしれないが,「○○主体」といえば次のような語彙を思い浮かべてしまう。「政治主体」:政治的権利を有する人々。あるいはその集団を意味することもある。「行政主体」:行政の執行を司る機関。ときに地方公共団体をこう呼ぶこともある。だが,いずれも『広辞苑』には載っておらず俗用かもしれない。
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