連載 保健婦日記・6
健やかにと祈る母のように
伊藤 芳子
1
1宮城県大崎保健所
pp.750-751
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900755
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看護婦さんや保健婦さんを好きにならない
平成四年五月十二日、看護の日のことでした。二十年間、精神病院へ入院して、退院はしたもののほとんど自分の部屋に閉じこもっているTさんを連れて、Hさんの家を訪問しました。Hさんも十年以上もの精神病院の入院生活を経て、今は生活保護を受けながら一人で町営住宅で暮らしているのです。以前、二人は同じ病院に入院していました。年上でしかも面倒見のいいHさんは、年下で病状もおもわしくないTさんの相談相手になり、いろいろ助言してなんとか再入院にならないようにと案じていました。ですから、HさんはTさんが心を開いている数少ない人の一人でした。
Tさんが不機嫌で布団をかぶってしまっている時でも、「Hさんのところに行ってみよう」と私が言うと起きてくるのです。その日もそんなふうにしてTさんを誘って、Hさんの家であれやこれや三人で話しあっていました。二人はタバコをふかしながら、私はウーロン茶です。
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