扉
祈る
松岡 健三
1
1愛媛大学脳神経外科
pp.205-206
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900223
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元大阪大学総長で学士院会員であられた山村雄一先生は,私が直接お目にかかった人々の中で最も人間的な魅力に溢れたお方の一人であったが,残念なことに昨年71歳でお亡くなりになった.先生の座右銘に“夢みて行い考えて祈る”という御言葉がある.これは研究者としての経験にもとついて先生御自身が創造されたものである.この短文は含蓄に富んでいるので内容の説明が必要であろう.先生の御著書「医学と人間」所載に従って,以下に要約することにする.
先ず自分の仕事を始める動機は,名誉や財産,権力などを手に入れることではなく“夢みる”心を持っていることが大切であると主張される.すなわちロマンを抱くことである.その次は実行することである.ここで注意しなければならないのは,あとに来る“考えて”より“行い”が先に来ていることで,この順序を変えてはならない.“夢みて”慎重に考え込んでいると,結局何もしないで終ってしまうことが多い.まず体を張って働くことだといわれる.次に行った結果について考えることの重要性は言うまでもない.山村先生らしく積極性に富んだすばらしい座右銘だと思う.ところで私が一番注目していることは,“祈る”という言葉で最後を結ばれている点である.どういうことを何に向って先生は祈っておられたのであろうか.この点について先生の文章をそのまま引用させていただく.
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