連載 家族看護を創る—家族看護研究会での学び・1【新連載】
家族とどう向き合うか
渡辺 裕子
1
,
鈴木 和子
1
1千葉大学看護学部家族看護学(千葉銀行)講座
pp.740-743
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900752
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はじめに
価値観が多様化しているといわれる現代にあって,「家族」は人々のこころの拠り所としてますます大きな位置を占めるようになり,たとえ身体が不自由になっても住み慣れた家庭で生活したいという願いは切実です。ところがその反面,家族の持つ力は弱まっているとも言われ,健康な家族でさえ,本来持っている力を失い,かつてはごく当たり前であった家族の課題を達成できずに立往生している姿も目立っています。そして,家族を支える体制があまりにも貧弱であることは言うまでもありません。このような家族を取り巻く状況に,どう対応すべきか看護職としての姿勢が問われている時代だと言えるでしょう。
一方,国立大学では最近,従来のクローズドな大学のあり方が見直されてきており,地域の生涯学習センターとしての機能を充実強化しようという気運が高まっています。そうした折に,千葉大学では,千葉銀行から高齢化社会に対応する看護の研究教育に役立ててほしいと寄附の申し入れがありました。前述したような看護を取り巻く社会的な要請から,平成4年度から5年間の予定で看護学部に家族看護学講座が開設され,すでに1年以上経過しました。どのように社会に貢献していくかについて看護学部では,まず現場の看護職の抱える課題を共有し,実践活動の中から家族援助の本質を導き出して,家族看護学を構築することが不可欠だと考えました。
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