研究
生きがいを見出したYさんへの援助活動—18年間の記録から
大須賀 恵子
1,2
1厚生省看護研修研究センター保健婦養成所
2現在所属:愛知県立総合看護専門学校保健科
pp.810-819
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900326
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要約
1)S字状結腸癌による腸閉塞の患者が,家で苦しんでいるところに訪問した。酒に溺れ,荒れた生活の果ての病気に受診の費用もなく,「もう死んでもよい」という事例への援助過程を考察した。
2)生きがいを喪失し,局限状態にある患者を援助する場合に,生きるか死ぬかというような重大な決断は,できるかぎり対象者自身にさせることが望ましい。自分自身で決断したかどうかが,その後のその人の生き方に関わってくる。自分で決断させることは,その後の人生に,主体性をもたせることにつながる。
3)保健婦が直接家族指導をしなくとも,対象となる人をしっかりと支えることが,家族を支えることにもつながることが分かった。
4)保健婦が地域でコーディネーターの役割を果たすためには,①対象の生活実態をきっちりとらえること,②地域に密着した活動ができていること,が前提になることが分かった。
この事例は,厚生省看護研修研究センター看護教員養成過程保健婦養成所教員専攻の事例研究の時間に,検討されたものである。検討によって,今迄経験や勘で実施していた援助内容の意味が明確になった。まだ自分の実践した内容を十分に理論化できているとはいえないが,その点は今後の課題としたい。センターでの事例検討で気づくこと,学ぶこと,他の人と共有することの喜びを実感できたのは,何よりの収穫であった。
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