連載 ケーススタディ—アルコール依存症への理解と援助・1【新連載】
もと暴力団員の回復—反社会傾向とアルコール依存症
徳永 雅子
1
1玉川保健所
pp.797-804
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900324
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●ケーススタディの連載にあたって
今年の日本アルコール医療研究会は,熊本県の阿蘇で開かれた。その分科会ではじめて「保健婦の役割は何か」についての討論が行なわれたが,これまでのアルコール医療に対する保健婦の関心の乏しさからすれば画期的なことだったと思う。しかし私たちは,まだ自分の役割について明確な答えを持ち合わせていないのではなかろうか。研究会で報告を聞いていると,保健婦が中心に関わっているところと関心の薄いところでは,問題のとらえ方や認識に大きな開きがあることに気づく。
アルコール問題の相談は難しいと言われる。取り組むにはネットワークや根気も必要である。保健所によっては精神保健相談員にお任せというところもある。しかし,果たしてそれでいいのだろうか。私は,“アルコール依存症とは何か”ということを理解して,はじめて家族関係の構造が見えてくると信じている。そして,これは母子保健や他の精神保健のケースでも相通じる家族システムの問題である。“ケースに関わる”とはどういうことなのか,いま一度問い直したい。私たちは,地域のアルコールをはじめとするアディクション問題のケースに関わってこそ,見えざるものが見えてくるのではなかろうか。より市民の立場にたった保健活動を展開するためにも。
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