特集 多様化する在宅ケアシステムと看護職の役割
任意の看護グループによる在宅ケアシステムの模索
村松 静子
1
1在宅看護研究センター
pp.215-220
発行日 1990年3月10日
Published Date 1990/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900036
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I.生きた看護を提供するために
昭和58年2月,必要に迫られて発足した訪問看護グループ。ボランティから有限会社へ,そして任意団体へとその形態を変え,いまやっと社会のなかに位置づきつつある。高度医療化・高齢化する社会のなかで,地域においても私たち看護婦がしなければならないことがあった。それはまさに真の看護の提供である。“看護を欲する方へ,必要なときに,必要な看護を,必要なだけ,望む場において,即,提供すること”である。この数年間,在宅で療養する方たちへ真の看護を提供できるよう,みな必死に取り組んできた。しかし,看護婦であれば当然行えるはずのことが,いざグループとして忠実に行おうとすると,なかなか難しいことがわかった。職種・器材器具ともに豊富な施設のなかでの看護や,個人的に対象を絞って行っている看護とはまったく異なるのである。対象者の病状はさまざまであり,介護ヘルパーが誕生したいま,求められることは当然医療に傾いてくる。そこには多くの能力が要求された。組織づくりに加え,経営,そして看護の質を確保すること。看護教育で得た知識・技術はもちろんだが,それだけでは全然たりないのである。「生きた看護を提供したい」と,どんなに純な気持で叫んだとしても,設備費など最低必要な資金がなければ長続きしないこともわかった。資金が底を突いたとき経営の難しさをひしひしと感じる一方で,このままで引き下がるわけにはいかないと固く決意したものである。
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