特別企画 慢性疾患の増加と病院
ホスピス—末期患者へのケアの模索
前田 信雄
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.956-960
発行日 1980年11月1日
Published Date 1980/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207301
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1980年5月29日のNHK教育テレビは,「高齢化社会への展望」と題する討論の録画を放映した.フロアからのひとつの質問は,ある病院長からなされたが,その核心は,排泄の世話が必要な寝たきり老人を,いったいだれがみるのか,みなければならないのか,ということであった.主として病院がケアしなければならないのか,それとも福祉施設なのか,いや主として家族がそれを支えるのか.その点をめぐる答えやコメントは不十分かつ浅薄なものであった.問題は確かに深く,解決は容易でなく,その見方も多様に分かれるテーマではある.しかし,こういう問題を避けて通ることはできない.
今日本では,全死亡約70万人のうち,予後不良,死亡が近い将来予測されていて,現在治療の方策もなく苦しんでいる末期患者は数10万人に達すると思われる(がんだけで年間約15万人の死亡).約50万人余の寝たきり患者の一部に相当し,その人たち以上に困難な医療と福祉の対象なのであるが,欧米ではホスピスという極めて意欲的な新しいケアの方式が実践されている.欧米と口本での数少ないケア体系ではあるが,このホスピスのやり方と模索を通じて,老人医療や慢性病患者医療のあり方を展望してみることにしたい.
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