発言席
産業保健と保健婦
天明 佳臣
1
1港町診療所
pp.106
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207478
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産業保健活動のありようをめぐって,もう10年ほども前から西ーロッパ諸国で提起されていて,注目すべき問題が二つある。ひとつは,その三つの分野の活動,作業管理・環境管理・健康管理を進める専門スタッフである医師,産業看護婦,インダストリアル・ハイジニスト,人間工学専攻者などのチーム・リーダーには医師がならなければならぬとする考えを誤りとして退けている点である。もうひとつは,産業保健を効果的に進める上で各事業所での労使の自主的努力を決定的に重要なものとして,あらためて強調している点である。
こうした動向の背景にあるのは,急速なテンポで展開する技術革新とそれにともなう労働態様の変貌であろう。重筋労働は激減したのだが,労働はシステム化された流れの一部に組込まれて,心身の拘束性の強い,単調な反復作業にとって代った。局所的筋の過重負担やメンタル・ストレスをどう薄めてゆくか,作業管理の重要性は高まっている。新手の危険や有害性を予測させる機器・化学物質なども産業現場には次々に登場し,安全衛生規準の設定が追いつかない。法規準を守っていれば事足りるというわけにはゆかず,環境の専門スタッフの果す役割もこれまでになく大きくなっているのである。一方,こうした状況下では,現場の異常や危険をいち早く察知して,多様な方法でそれらを回避しようとする現場作業者による日常的な予防努力を重視するのは,当然のことであろう。
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