活動報告
障害児を愛せないという母親との関わり
小谷 玲子
1
1大阪府狭山保健所
pp.137-143
発行日 1981年2月10日
Published Date 1981/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206347
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M家族を知ったのは2年前である。当時保健所を訪れた父は,生後間もない子供が脊椎に障害があるので育成医療の申請をしたのである。手続きを終えた父に,私は担当保健婦であることを申し出て面談した。赤ちゃんは脊椎抜裂症という病名で総合病院で手術を受け母がつきそって入院中であった。「長女は丈夫に生まれたのに,2人めの子供はおもいもかけぬ病気で……とりあえず,病院の指示に従うよりしようがない」と弱音も吐かず淡々と話す父の表情がかえって辛かった。
脊椎抜裂症という病気は,脊椎骨のいくつかが発育の異常をきたす,未発達で,下肢の筋力低下,排尿便の調節などに支障をきたす病気である。一昔前は身体が弱いので幼児期以前に生命を終える赤ちゃんが多かったらしい。最近は生命を救う技術の進歩で生存可能となって,その後の対策が必要とされるようになってきている。障害の程度は子供によって異なっていて,なんらの補助なしに独立歩行のできる児もあれば,一方車いすを使用しなければならない子供もある。Nちゃんはこの脊椎抜裂症の中等度の状態だと医師から診断を受けていた。
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