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Ⅰ.はじめに
小児がんは,1年間に15歳未満の子どもの1万人に1人が発症する希少な疾患であると真部1)は述べているが,小児にとっては死亡原因の上位でもある.子どもの成長を楽しみにしていた家族にとってその診断は大きな衝撃を与えるものとなる.衝撃に続いて,「なぜ,自分の子どもがこのような病気になるのか」という否認から次第に子どもを失うことへの不安や恐怖へとつながる.泉ら2)は,子どもの生命の危険性をより高く感じることは,家族の心的外傷ストレス症状発症の予測因子となると示唆している.「自分が早く気づいていたら」「自分のせいで」などと罪責感をもつ母親が自分の気持ちの整理もできないまま,闘病生活を強いられることになり,危機的状況に陥りやすいことは容易に想像がつく.しかし,吉田ら3)は,日本において難治性小児がん患児の親が経験する困難を取り扱った研究は非常に少なく,支援体制も確立していないとしている.
このように小児がん患者,特に難治性小児がん患者の親は大きな危機に直面しケアを必要とするにもかかわらず,支援は十分ではないと考えられる.吉田らの言葉を待つまでもなく,われわれは,小児に限らず治癒の望めないがん患者および家族を前にして,どのように関わるとよいのか思い悩んでいるのが日常である.
筆者は,緩和ケアチーム専従看護師として,難治性小児がん患者の母親に戸惑い悩みながら関わった.日々の関わりの中で,母親は困難な状況に適応しようと努力を続け,少しずつ変化していくさまがうかがえた.いったんは,死を避けられないわが子を抱えて適応障害となったが,わが子の死を受け入れられる母親へと変化していった.このような変化は周囲との相互作用の中で生じてくると戈木4)は述べている.この相互作用の中には母親を取り巻く多くのものが混在すると考えられる.その中から筆者である看護師(以下看護師とする)の関わりを分析し,窮地に陥っている家族への有用な援助について探究したい.
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