保健活動—心に残るこの1例
精神分裂病の息子を持つ母親との関わりから
南雲 孝代
1
1千葉県佐原保健所
pp.370
発行日 1994年5月15日
Published Date 1994/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901041
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私が○氏(23歳)の住む地区を担当したのは平成2年で,当時,病識のない○氏は精神分裂病の治療半ばで無断離院していた.しかし,○氏の母が水薬を食事に混ぜて服薬させることで目立った問題行動はなく,また,理解ある職場のおかげで休みながらも就労は何とか継続している状況だった.前任保健婦の記録には,家族(○氏,母,父)皆に,現状を認識し具体的な生活設計を自ら描く能力に欠けていること,そのために保健婦および関係職種の人々が苦労して当事例に取り組んできたこと,その成果として生活保護の受給を母に納得させ,○氏と母を治療ルートに乗せることができたことが記されていた.
一見安定しているように思えた○氏家族であるが,訪問を続けることが徐々に辛くなってきた.というのは,薬の副作用症状に苦しむ○氏を見た母が,独自の判断で何度も服薬を中断させ,やがて暴力等の問題行動が頻発し就労が中断すると,仕方なく服薬を再開.しかし,状態が改善するとともに母は再び○氏の治療の必要性を疑問視する.この一連の経過を繰り返すばかり.
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