連載 保健婦のための環境衛生学 環境問題と保健婦活動・4
化学物質と健康=1
青山 英康
1
1岡山大学医学部衛生学教室
pp.228-234
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205703
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化学的な方法によって調査測定される環境条件としては,各種の有害物質と,日常的な関心が要求される栄養などがある。薬剤にその典型を見るように,疾病の治療に有効な薬剤も,使用法や量を誤ると有害物質となるし,使用法や量を誤らなくても常に副作用の存在を看過してはならない。とくに公衆衛生学の立場では,単に個人的なレベルでの副作用の問題だけではなく,物理的環境における電離放射線の場合と同様,集団としての曝露や蓄積量による副作用の増大があり,その上今日では数多くの化学物質による複合汚染の問題が重視されなければならない状況にある。
この点わが国では,国民性として"薬好き"と評されるように,薬剤に対するプラス面のみが過大評価されて,最近の公害問題――とくに薬害問題や予防注射禍の問題,さらには食品公害の問題が大きくクローズーアップされるまでは,その副作用や有害作用に対しては,ほとんど注目されることがなかった。一方最近の公害問題に対する関心のたかまりの中で,これまでの信仰にも似た化学物質に対する態度が極端にまで逆転し,すべての化学物質が直ちに死をもたらす"毒物"と見なされるようになった。
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