連載 暮らしに潜む環境問題
化学物質過敏症
石川 哲
1
1北里大学医学部
pp.116-119
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901642
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1.化学物質過敏症(Chernical Sesitivity)
化学物質過敏症という言葉を1992年に本邦に紹介して数年になった.最近では東京都やその他の公的部署も多大な関心を寄せており,この言葉も急速に市民権を得つつあるがまだ耳新しいかもしれない.しかし実際は本邦でも欧米でも歴史は古く,20年以上も前にすでに異なった病名で報告されている.有名なミュージシャンが自宅で芝刈り中に除草剤の過敏症で心臓麻痺のため死亡した,マラチオンの空中散布で目が見えなくなったなどの報告もあった.このように人類が作り出した化学物質でアレルギー様の反応が起こり,従来の中毒という概念からは考えられないほど微量の化学物質により様々な症状を来すこの疾患について正しい知識を身につけていただき,役立てていただきたいと思う.
化学物質過敏症は過敏という名が示すように.ごく少量の物質にでも過敏に反応する点ではアレルギー疾患に似ている.最初にある程度の大きい量の有害化学物質に曝露されると過敏となり2度目に同じ物質に少量に曝露されると発症するという1型アレルギーに似た経過を取る(図1).時には最初に曝露された物質と2度日に曝露された物質が異なる場合もあり,その場合多種化学物質過敏症(multiple chemical sens itivity)と呼ばれる.一般のアレルギー疾患の花粉症でもスギがだめな人は,マツもだめ,カモガヤもブタクサもだめというのと類似しているかもしれない
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