研究
子宮頸部前癌性病変患者の追跡管理と保健指導
金子 正子
1
,
杉本 宣子
1
1栃木県がん検診センター婦人科
pp.235-240
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205704
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
昭和50年10月18日,栃木県宇都宮市において,第14回日本臨床細胞学会秋期大会が開催された。婦人科領域においては,"子宮頸部ディスプレイシアをめぐる今後の諸問題"がとりあげられた。(表1)
ディスプレイシアとは,1938年ごろより同種の病変に対して種々の名称で呼ばれてきたが,1961年,ウィーンで開かれた第1回国際細胞学会で,子宮頸部に発生する上皮異常のうち,まだ完全に上皮内癌の基準を満たさないものを,一括してディスプレイシアという名称で統一されたものである。本疾患は,形態学的および生物学的には良性病変とされているが,ときに正常範囲を越えて悪性化をたどるという極めて不安定な病変で,癌に前駆するいわゆる前癌性病変ともされている。すなわち,ディスプレイシア→上皮内癌→初期浸潤癌という段階説は,今日ほぼ定説とされている。したがってその追跡研究(follow up study)の成績は,内外とも多数報告されている。私たちは,栃木県がん検診センター婦人科に勤務し,日常ディスプレイシアの外来患者に接し,follow up中の保健指導にあたっている。幸い,今回のシンポジウムを聞く機会にめぐまれ,また,シンポジストの一人である,当センター婦人科部長屋代定夫博士に(表1),その解説と指導をうけたので,当疾患患者の外来における管理をめぐる諸問題について,アメリカの現況と比較検討し,若干の知見を得たので報告する。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.