連載 現代の看護労働試論・4
看護職と専門職問題—准看差別問題に関連して
宗像 恒次
1
1日本看護協会・社会学
pp.760-766
発行日 1975年12月10日
Published Date 1975/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205667
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一般に看護職は,いちどは次のような相矛盾する二つの考え方の前に悩んだ経験をもっているだろう。すなわち,一つは看護職としての社会的任務を十全に果たしていかねばならないという考え方であり,もう一つは,身体を蝕むまで,また育児や家事などを担う生活人としての権利を放棄してまで業務を行なう必要はないという考え方である。両者は,しばしば相矛盾するため,看護職にはこの矛盾した考え方の中で悩みながら業務を行なった経験をもつ人は多い。
ところで,このような二つの考え方の相違は,以上のように個別の看護職自身の中で自己と自己との対立という形をとって現われるが,しばしば集団と集団との対立という形をとっても現われる。すなわち,前者は,たとえ自己を犠牲にしてでも看護職としての社会的任務を果たさなければならない,それが専門職者たるゆえんだと考える人々によって形づくられる。他方,後者は,自己を犠牲にしてまでは看護職としての責任を感じる必要はない,看護職といえども人間であり,人間であることを無視してまで業務に献身する必要はない,そのような考え方は前近代的であり,現代は労働者としての権利を前面に主張すべきだ,という考え方をもつ人々によって構成される。以上のように"看護職は専門職者か労働者か"という問いには,一般に対立した答えがあるようである。
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