余白のつぶやき・16
准看—その闇
べっしょ ちえこ
pp.1221
発行日 1980年11月1日
Published Date 1980/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919100
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離職して二十年にもなる私は、もはや看護のインサイダーとは言えない。さりとて全くのアウトサイダーでもなく、いわば中間者として、熱くもなく冷たくもない血液をこの世界に通わせているのである。ここまで血を静めるのに二十年もかかったわけだが、さめてもなおきっぱりとアウトサイドに身を置けないでいるのは、看護というものが、あまりにも色濃く私の青春期を隈取っていたからだろう。思えば私は、母の子宮と看護の子宮の両方から養分を摂って人となった。
こどもが母親という一体者に対して、熱くも冷たくもなくなるということは、すなわちそれからの乳離れを意味する。さいきんの私の、看護への中間感情も、ある雑誌に載った数篇の小さな文章によって、にわかに騒ぎだしたのである。
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