連載 現代の看護労働試論・3
看護職における労働疎外問題
宗像 恒次
1
1日本看護協会・社会学
pp.720-723
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205660
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
前号では主として看護職の健康人としての,女性としての,さらには妻・母たる生活人としての権利を守るために,どのように労働条件が改善されていかねばならないかという観点から,もっぱら実態をとらえてみた。しかし,私たちはそのような問題の多い実態の中でも,反面,看護職の中には非常時の出勤・夜勤労働を業務上必要不可欠なものと考える人が多いことや,また乳幼児をもちながらも,なんとか今の仕事を続けていきたいという人の少なくないように,彼女らは単に苦しい労働だけをとりたてて問題にしようとはしていないことを知った。看護職にとって,生活人としての権利を守らねばならない労働条件が,いかに問題多きものであっても,また"責任の重さ"や"業務のつらさ"などの苦痛をともなう諸条件をかかえていても,これこそ自分の仕事である,と感じられるものであるならば,それはひるがえって苦悩として主体的に受けとめられ,みずからの人格形成の不可欠な契機へと,従って仕事の喜びと充実を形づくるものへと転化しうることを見い出していくだろう。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.