ニュース診断
最高裁を注視しよう
久米 茂
1
1深夜通信
pp.359
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205287
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去る4月4日の,親殺しを他の殺人より重く罰するのは違憲だという最高裁判決について,世人の評価はいろいろであった。しかし大別すれば次の2つに分けられよう。1つは,愛情とかモラルなど人間の内面にかかわる事柄は,外から強制すべきものではないのだから判決は妥当だとする意見と,もう1つは,親と子の関係は特殊なもので根本的に他の関係とはちがうのだから,親殺しの罪は加重さるべきである。刑法第200条(自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス)の規定は当然でなくてはならない,とする考えかたである。つまり判決に不服の意見。
そしてジャーナリズムに表われた著名人の意見の大半は,判決支持であった。だが筆者にいわせるなら,この支持派の主張は深さと鋭さに欠けるものがほとんどで不満だ。というのは,多数意見派14裁判官のうち8人は,尊属殺が執行猶予をつけられないことを最大のポイントとして違憲判断を示したにすぎず,尊属殺自体を違憲とはしていないのである。この意味から6裁判官が示した判断こそが妥当なものであり,したがってきびしくいうなら,14裁判官によつて示された多数意見の中身はハッキリ対立しているのである。
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