Medical Topics
難治性の肝炎
鈴木 宏
1
1東大医学部第1内科
pp.360-361
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205288
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難治性の肝炎は1つの疾患としての病名ではなく,ウイルス肝炎のなかで難治性のものをさしており,国が難病対策の一環として,昨年度8つの特定疾患を決定したさいにその1つとして取り上げられたものである。したがって,ウイルス肝炎のなかで,どこまでを難治性の肝炎とするかについては明確な規定はなく,今後の研究の結果により決定されていく性格のものである。厚生省の特定疾患対策費による"難治性の肝炎"班では暫定的に,劇症肝炎,慢性肝炎および肝炎による肝硬変をその対象としている。劇症肝炎は死亡率が高いこと,肝硬変は致死性の疾患であること,また,慢性肝炎は経過が長く,治癒しがたい疾患であることなど,これらの疾患はすべて難病という点では一致しているといえる。
肝炎ウイルスについては現在まで多くの研究がなされてきたが,残念ながらまだその培養には成功していない。しかし,Blumbergらによって発見されたオーストラリァ抗原(Au-抗原)が肝炎ウイルスの1つである血清肝炎ウイルスと密接な関係にあることが明らかにされ,1つの手がかりが得られたのが現状である。ここでは,紙数の関係でまず難治性の肝炎の理解のためにウイルス肝炎およびAu-抗原について述べ,さらに難治性の肝炎の治療について述べることとする。
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