特集1 四日市公害判決と私
管内にはカネミ油症患者がいる
平田 ミチ子
1
1福岡県飯塚保健所
pp.11-13
発行日 1972年9月10日
Published Date 1972/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205133
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保健所は警戒されている
公害,公害,公害。毎日幾度となく耳にしない日はない。いつのころから耳にするようになったのか,思い出せないほど以前から聞きなじんだことば……。あるときは,なんの感情の動きもない聞きなじんだ響きとして通り過ぎることもある。またあるときは,やり場のないいきどおりにいらだったり,なんとかしなくっちゃあ,と思い悩んだり。自分ひとりではどうにもならないとあきらめてしまったり,自己嫌悪に陥ったり。そんな私に,"保健婦としてこれでいいのか"という気持ちがいつもつきまとって,なんともうしろめたさに似たものに責められている。それにもうひとつ,公害の話を耳にするたびに,なんともいえない苦しい思いをさせられることがある。それは,私の勤めている保健所の管内に,カネミ油症の患者をかかえているからである。
昭和42年,この問題が発生したとき,県も保健所も,何をしただろうか?保健婦も,数日ただばたばたと忙しかった。しかし全くどこにも主体性はなかった。結果的には,何もわかっていないのに,一応住民の不安な訴えを聞いて,簡単にセレクションしてしまっただけで終わってしまった。だから,いまだに,患者たちの保健所を見る目はきびしく,口をついて出てくることばも,会社への憎しみと同じように,不信感をぬぐいきれないままでいる。
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