病気のはなし
カネミ油症
永井 諄爾
1
1中村学園大学
pp.82-88
発行日 1977年2月1日
Published Date 1977/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201269
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ある異様な皮膚疾患の発生からその原因の究明まで
1968年6月から8月にかけて,写真1〜6に示すような皮膚症状,すなわち全身の,特に顔面の発疹及び身体各所の色素沈着を主症状とする4家族13名の患者が,九大病院皮膚科外来を訪れた.それまでに経験されたこともない極めて異様な疾患であり,家族発生であるところから皮膚科では,変質した油脂を含む食品の摂食,あるいは文献調査などから,食品に混入した有機塩素化合物による,いわゆる塩素座瘡を疑っていた.
これと前後して,福岡市近傍だけでなく北九州一帯,更に広く関西以西,四国にも同様の患者が多発していることが明らかになった.そこで九州大学医学部では,当時の病院長勝木司馬之助教授を班長とし,医学部だけでなく薬学部,農学部,工学部からの専門家及び福岡県衛生部長,部員の参加を求めて研究班を組織し,臨床部会,疫学部会,分析部会を設け,この病因・病態の究明を行うことになった.
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