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研究と報告
カネミ油症(塩化ビフェニール中毒)小児の6年後の精神神経学的追跡調査
A Six-year Clinical Follow-up Study on Infantile PCB (Polychlorbiphenyl) Poisoning
原田 正純
1
,
高松 誠
2
,
井上 義人
2
,
阿部 純子
2
Masazumi Harada
1
,
Makoto Takamatsu
2
,
Yoshito Inoue
2
,
Junko Abe
2
1熊本大学体質医学研究所気質学
2久留米大学医学部環境衛生学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Institute of Constitutional Medicine, Kumamoto University
2Dept. of Environmental Health, School of Medicine, Kurume University
pp.151-160
発行日 1977年2月15日
Published Date 1977/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202584
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I.はじめに
1968年夏,北九州を中心に西日本一帯に,米ぬか油にカネクロール400(塩化ビフェニール,PCB)が混入したまま大量に販売され,大規模な中毒事件(いわゆるカネミ油症)が発生した。九州大学医学部油症研究班がその原因究明や実態究明にのり出して7年が経過した。1975年10月,厚生省食品衛生課調べでPCB中毒と認定された患者は1,495人となっているが,被害者の正確な数は未だ不明である。患者は大人の場合,2,000〜3,000ppmのカネクロール400(PCB)を含んだ油を平均5カ月間食べたといわれ,初期の急性の平均発病量はPCBの2,000mg,最小発病量は500mgで体重50kgで1日67μg/kgを摂食したと計算されている1〜3)。
油症の主症状は初期において皮膚症状が著明であった。すなわち,顔,首,躯幹,臀部,陰部などに座瘡状皮疹や塊状の粉瘤を生じ化膿し,爪・歯肉,顔,角膜輪部に色素沈着,眼脂浮腫,関節腫脹,爪の変形,掌蹠の限局性角化,毛孔黒点化,生毛の黒化,発汗過多,外陰部および乳房の脂腺部に一致した嚢腫形成,脱毛,皮膚乾燥,毛孔性角化,小丘疹などがみられた4)。さらに,眼瞼マイボーム腺からチーズ様分泌物,視力障害,眼脂分泌過多,充血が知られている。呼吸器症状,消化器症状,肝機能障害,骨・歯牙の変化,循環障害,末梢神経障害,内分泌障害などが同時に明らかになり,カルシウム代謝障害,脂質代謝障害なども明らかになり,障害は全身のあらゆる機能に及んでいることが明らかになってきた5)。
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