ほんだな
—Gerald Caphn 山本 和郎 訳 加藤 正明 監修—地域精神衛生の理論と実際/—安富 徹 編—看護管理の実際
小嶋 謙四郎
1
1早稲田大学
pp.60-61
発行日 1969年6月10日
Published Date 1969/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204449
- 有料閲覧
- 文献概要
この本を,母子衛生や乳幼児指導に関心をもつ保健婦や,母子看護を担当する病院のナースにも,ぜひ読んでもらいたいと思う。"地域精神衛生の理論と実際"というこのタイトルからの印象と,「これを母子関係に興味をもつひとたちにすすめたい」というわたしのことばに奇異な感じをもたれたら,なおさらそう思う。それほどG.Caplan教授のこの著書の考えかたと計画は,新鮮で魅力にとんでいる。
保健婦は,たとえば未熟児を出産した家庭を訪問する。未熟児出産というできごとは,その若い母親にとっても,家庭においても,今までの心のバランスをくずさせる,いわば危機的な出来事である。ある家庭は,この現実を素直にうけいれ,「それをみつめ,それについて考え,それについて悩み,それについての情報をさがそうとする」(本文より引用)。またある夫婦は,たがいにこの不快な現実に直面することを避け,この不快感を抑圧し,問題の責任を他入に転嫁し,敵意を外にむける。未熟児出産という危機が,家族を精神的な健康の極にも,また不健康な極にも方向づける作用をもっている。地区担当の保健婦はだれでも,家庭訪問の記録のなかからこのような事例をいくつかひろいだすことができる。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.