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—加藤正明・長谷川和夫編集—「老年精神医学」
相沢 豊三
1
1立川共済病院
pp.68
発行日 1974年6月1日
Published Date 1974/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205374
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広汎な領域からのアプローチ
老年期においては,心身の機能が低下して身体面ばかりではなく,精神面にもいろいろな疾病がおこりやすくなり,精神面のいわゆる生理的老化は病的現象とからみあって複雑化するものである.具体的に個々の人間についてみても,生理的な加齢と合併した疾患との区別は必ずしも明確ではなく,むしろ相互に影響しながら臨床像を形成していく場合が多い.したがって老人の病気は生物学的年齢に強く修飾されるだけに,若年者に比べその臨床像は,はなはだしく異なるものがある.一般に老年病学は,生物体の基礎物質や,その現象をただ自然認識の立場から研究するだけではなく,その研究分野は疾病の治療・予防から健康の保持・増進を目的とする領域にまで及ぶため,まず人間を身体的,精神的,社会的な存在として理解し,多面的なアプローチが適用されねばならぬ医学である.
老年精神医学も同じくその線に沿い,生物学,心理学,社会科学等と緊密な連絡をとりつつ独自な立場の下に研究が進められるべき性質のものであることはいうまでもない.
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