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紹介
—Silvano Arieti 著 加藤 正明 河村 高信 小坂 英世 訳—精神分裂病の心理
Interpretation of Schizophrenia
島崎 敏樹
pp.126
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200067
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原著者のアリエテイは,1914年にイタリアで生れ,母国のピサ医大を卒業してすぐ渡米し,大学院研究をはじめ,以後の精神神経学の研究と実地をすべてアメリカで行つている人である。訳者序によると,研究のはじめには「脳マラリアの組織病理学的変化と精神病状との関連」のように神経病理的なものであつたが,のち退行した分裂病の臨床に没頭し,その成果が本書となつたという。
合衆国の精神医学の思想的特徴がフロイド的力動論にあることはだれでも知つているが,アリエテイもフロイドに近い一人であることはまちがいない。というよりももつと正確には左派フロイドの創始者サリヴァンの人間関係理論の方に共鳴しているようである。それで著者の定義によると「精神分裂病とは,児童期に原発し,生涯のあとになつて心理的因子によつて再燃してくる極度の不安状態に対する特異な反応である。その特異な反応とは,より低次の統合水準に属する古態的心理機制をとりいれることから成り立つている。その結果,より低次の水準への退行となるのであるが,退行とはなつても,より低次の水準での統合とはならないから,平衡状態の崩壊がおこる。その結果さらに退行がおこることになる」と考えている。
つまり分裂病になるずつと前の子供の時代において,親との間に不快な対人関係があつたために,これを断とうとして,孤立し,よそよそしくなつて,特有な人間疎外な性格ができていくわけであるが,のちに何らかの心理的な衝撃が加わつて,これまでの防衛が挫折すると,もうこれ以上現実と妥協できず,逆に現実の方を変えなければならなくなり,精神病になることでこの目的を果すのだ,といら解釈をしている。
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