読者からの手紙
血友病にとりくんで
北村 照子
pp.10
発行日 1967年6月10日
Published Date 1967/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203943
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昭和39年5月中旬,このN君の家をはじめて訪問しました。大工の父(37歳),家庭内職の母(34歳),長女(11歳)そしてこのN君(8歳)という家族構成です。問題はN君,両足を前に曲げて,フトンの上で何やら小さなプラモデルに夢中になっているその手足の細いこと,一瞬麻痺という言葉が私の脳裏を走りました。ズボンをまくり上げてはみ出さしている足関節と膝関節,特に腫脹のひかない膝関節がいやに目立ってその足の細さが痛痛しくて思わず目をそらしました。
生後9ヵ月,直径3cmぐらいの少し盛り上がったような紫斑として発病,それからお母さんの病院遍歴が始まったのです。ある病院の紹介で東邦医大に1週間入院し,はじめて血友病であること,ビタミンCを十分にとる以外,現在治療法のないことをはっきり告げられました。5歳になったばかりのころ,大腿から膝関節が曲ったなり伸びなくなって,立てなくなりました。病気はあきらめはしたものの,命のあるかぎりは人並みの道を歩かせたいと,朝おんぶして登校,腰かけにすわらせ,休み時間を見計らって便所その他の用事をたす,迎えに行くというお母さんの通学が続いて来たのです。
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