連載 保健指導を科学する・11
保健婦活動の事例をもとにした社会学,社会倫理学,臨床心理学的な考察
保健指導の理論
田中 恒男
1
1東大保健学科
pp.74-75
発行日 1966年12月10日
Published Date 1966/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203810
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準拠枠の違いが,お互いに同じものを見ながら,全く異なった概念としての心像をつくることは,保健指導の場でしばしばみとめられる重要な事実である。いうまでもなく,このままでは,お互いに平行線をたどるばかりで,たとえいくら接触がつづいていても,相手に何の変化ももたらせはしないだろう。このさい,たとえ知識を与えても,それがどのように受けとめられるかは,あまり好ましい期待はかけられないのである。
こうしたさい,保健婦の多くがとる反応は,しばしば"知識がない"という判断にもとずいている。医療中絶にしろ,この例にしろ,私の出あった多くの保健婦は,一様に相手の知識の貧困を指摘する。しかし,波多野姉の説明にもとりあげられているように"知識自体のうけとりが,保健婦の期待とは全く異なつたものであることが多い"事実に,注目しなければならない。こうなると,相手を説得する以外(準拠枠をひとしくする以外)に方法はないと考えなければならない。
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