連載 保健指導を科学する・13
保健婦活動の事例をもとにした社会学,社会心理学,臨床心理学的な考察
保健指導の理論から
田中 恒男
1
1東大保健学科
pp.79-80
発行日 1967年3月10日
Published Date 1967/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203894
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この例の場合問題にされるべき点は2つある。すなわち
1.家族とのラポールのつけ方が適正だったか
2.ケース診断が正しかったか
の2点である。このうち,1の問題は,実のところ単に家族に働らきかけるだけでは,十分な効果は期待できないだろう。何故なら,今,問題視されている乳児保育への態勢づくりは,決して家族的な問題だけでなく,おそらくは社会的な因襲や経済問題が,さまざまに関係していると見てよいであろう。この段階では,保健婦のみならず,医師の権威をもってしても,どうにもならない場合がある。前にもふれたことであるが,いわゆるラポール作りの基盤として考えられている心理技術は,いろいろある。しかし,ここでその技術にいくら長けていても,おそらくは問題の本質は,なかなか解決されないと思う。その意味は,ラポール作りの技術のほとんどが,社会性に対する接近を無視(といえば極言なのだが,表面的にうけとられているラポール技術は社会性を考慮せず動いている)した形で展開されているからである。その理由は,ラポール技術発達の背景が,いわゆる面接相談(ことに事業体や学校で)や,セールス面接によって形成されているところが多いためだと言えよう。
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