連載講座 保健指導の理論と実際・1
生きている保健指導の対象
田中 恒男
1
1東京大学公衆衛生学
pp.33-36
発行日 1964年9月10日
Published Date 1964/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203202
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保健指導とは
保健指導という用語がいつから使われ始めたのか,はっきりした記録はないようである.おそらく英語のヘルス・コンサルテーションなどを訳したことばだと思うが,現在では原義をはなれてなにを意味しているのかあいまいな表現になってしまったようでもある.先きの関東地区の公衆衛生看護学会で千葉県のT先生が語られたように,保健指導ということばが,それを扱かう人によってかなり違う解釈がなされていることは,たしかにみとめられることだと思う.よく保健婦が「私たちの仕事は医者などには理解してもらえない」と嘆じられるが,(おそらくは保健指導がわかってもらえないという嘆きが大きなものか)人にわからない--あるいはわかってもらえない職業の意義などというものは,もともとなりたたないのである.だから,保健指導という用語についても学術的な検討はいざ知らず,常識的な意味だけでも内容を明らかにしておく必要があるだろう.
保健指導とはなにか.今私の机上に,保健指導を銘うった(あるいは重要な中味としている)書籍が数冊ある.そのどれを見ても漠然とした定義しか記されていない.しかも大部分は保健ということばに重点をおかず,単に指導というところにだけ強調点をおいた内容であることが多い.これは,"保助看法"に記されている保健指導の内容があいまいなのと軌を一にしている.
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