連載 保健と社会・8
地方自治体のサービス行政と無関心層の問題
奥田 道大
1
1東洋大学・社会学
pp.68-72
発行日 1966年11月10日
Published Date 1966/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203793
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行政府の威圧と住民の威信
地方自治体の地位と権限は,くだくだしい説明よりか,建物の構造ひとつにも象徴的に表現されています。卑近な例として,わが国のばあい,県庁所在都市を訪れて,道路さかいに向かい合う4つの建物のどちらが県庁で,他は市役所であるかを判断することは,さして困難ではありません。より高層で,見た目にも"威圧"感のあるのが,県庁です。県と市町村との地位の序列関係がそのままに建物に移しかえられているわけですが,中央官庁と県との関係についても,同様のことは指摘されましょう。
民主的行政を標榜する地方自治体の長い歴史と基盤を有する米国でも,連邦政府—州—市町村の序列に応じて,庁舎の"威圧"感に明瞭な差異がみとめられます。日本の県庁にあたるステート・ホールを訪れると,中世西洋のゴシック式の荘重な建物が,ゴールデン・ホールとも名づけられるように黄金色の大ドームを擁した絢爛たる建物か,いずれにしても,"おおぎょうな"雰囲気を基調としています。いっぽう市町村,とくに地方自治体の最小の単位である自治行政区(ミュニシパリティ)のタウン・ホールはといえば,おおくは木造の小じんまりとした建物で,個人の住宅と見まちがうばかりです。
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